第11回複言語・複文化ワークショップ
ツールで描き語る
わたしたちの言語・文化体験
ー親と子どもと教師たちー
2024年8月25日(日)に第11回複言語・複文化ワークショップが終了しました。
今回のワークショップの参加者は全員で33名でした。親と子どもと教師たちが、共にそれぞれの複言語・複文化体験を言語マップで、自分の中の複言語・複文化のありようを言語ポートレートで描き、語り、共有しました。参加者の内訳は以下の通りです。
大人 | 親 | 11名(教師でもある方2名、ダブルの方1名) |
教師 | 8名(大学、インターナショナル校、日本人学校) | |
母語・継承語に関心のあるタイの方 | 2名 | |
母語・継承語に関心のある日本の方 | 2名 | |
子ども | 大学生 | 2名(ダブルの学生1名、日本から移住の学生1名) |
小学生・中学生(ダブルの子どもを含む) | 8名(12歳5名、11歳1名、10歳1名、9歳1名) |
大人のグループを7つ、子どもだけのグループを1つ、全部で8つのグループを作りましたが、自身の希望で大人のグループに参加した12歳の子どもが3名いました。今回は言語マップおよび言語ポートレートの2種類のツールを描き、グループでポスターを作成し、それを全体で共有しました。
その後、自身が日本・台湾のダブルで、今は国境を移動して子どもを育てる親でもある方と、東日本大震災を機にタイに移住した大学生のお二人にご登壇いただき、経験を語っていただきました。
今回は親と教師と子どもの、それぞれの立場からの参加者がほぼ同じ割合であったことで、例年以上に多彩な複言語・複文化経験が共有されました。この報告では、ワークショップの概要と参加者の感想をご紹介し、ワークショップの様子を写真でお伝えします。
■ワークショップの概要
プログラム概要 | |
12:00 | ワークショップ開始 ・参加者紹介、代表挨拶等 ・これまでのWSの説明、本日のWSの趣旨、進め方 ・「複言語・複文化」とは |
12:13 | グループ内自己紹介 |
12:16 | 言語マップの意図と説明 |
12:22 | 言語マップ活動(写真1) 1.マップ作成 2.幸せシール・大変シール貼り 3.自分の言語マップの説明 4.貼りだし 5.感想記入 |
13:45 | 言語マップ活動のまとめ |
13:50 | 休憩 |
14:10 | 言語ポートレートの描き方の説明 |
14:15 | 言語ポートレート活動(写真2) 1.作成 2.解説を書き込む 3.自分の言語ポートレートの説明 4.言語ポートレートに書き足し 5.感想記入 |
15:15 | ポスターによる全体共有(写真3) / 登壇者による発表(写真4) |
16:00 | 全体まとめ(写真5) |
16:15 | 感想記入 |
16:18 | 今後に向けて / 終わりに |
16:30 | 終了 |
17:00 | 親睦会 |
写真1 言語マップ作成(子どもチーム) & 自分の言語マップの説明
写真2 自分の言語ポートレートの説明 & 自分の言語ポートレートの説明(子どもチーム)
写真3 ポスターによる全体共有 & ポスターによる全体共有(大人チームの子どもの説明)
写真4 登壇者Nさんの発表 & 登壇者Aさんの発表
写真5 全体のまとめ
※当日使用した資料はこちらからダウンロード可能です。
■参加者感想
全体感想より
自分の複数性を見ることができてよかったです。他のグループの話を聞くときに、Nさんのご主人と娘さんから話が聞けて、振り返りでNさん自身の話も聞けて、大変興味深かったです。(教師)
考えや経験の視覚化する作業がセラピーのようでリラックスしました。(保護者)
今回のワークショップを通じて、いろいろなツールがあり、みんな違っていいんだと心から思えて安心しました。(保護者)
言語ポートレートを描くことで、自分を客観視することができたことが新鮮でした。そして、その自分を周りの人に話したくなる、聞いてもらいたくなるという気持ちがわいたことも少し驚きました。次回は子どもと一緒に参加したいです。(保護者/教師)
自分は教師として、つい言語の運用能力を高めることに集中しがちですが、子どもや学習者にとって「心地いい」(※)ということが大切であるということが、とても印象に残った。(教師)
言語マップの作成では自分のことばをきゃっかん的に考えました。言語ポートレートを描く時に自分の気持ちを中心に考えました。こんなにプレッシャーを感じているのに、実際はかなりできている、よく生きているのではないかと思えるようになりました。(母語・継承語に関心のあるタイ人学生)
いろいろな気づきがありました。「心地のよい言語」(※)すてきな言葉でした。ありがとうございました。(教師)
たくさんいろいろな種類の言語が話せるのがいいと思いがちであるが、自分にとってここちのよい言語(※)を使って話す、コミュニケーションをとれたらいいと思えた。(教師/保護者)
※登壇者のNさんの話の中にあった言葉
言語マップの感想より
私の場合、いる場所によって使う言語の幅が変わったが、ほかの方の話で「誰といるかによって変わる」と聞いて、新たな視点だった。(保護者)
自分のルーツや環境の変化を見つめ直し、再認識や思い出したことがいろいろあった。環境、使用言語変化が思っていた以上に複雑だったことに気づき、自分を客観的に見ることができた。(保護者)
自分のことば使いとか、かこのことを改めて考えさせてよかったと思います。いろいろなことをふたたびかんがえられて、他の人のけいけんをこうかんできて、かんどうしました。(ダブル当事者/大学生)
外(環境)が変わったときが一番大変だったのだと改めてわかりました。その環境に慣れてきたころに幸せを感じました。他の人のマップとその説明を聞くのが興味深かったです。(特に子どもたち)(教師)
言語ポートレートの感想より
感動しました!この活動って自分の能力やできることを再び考えさせてもらったのです。どの部分に何言語で思っているのかって、いいと思います!自分の全体分かってくると思って、どの部分に考えないといけなくて、検討しないといけない点を見つからせるっていうのは、よかったと思います!(ダブル当事者/大学生)
言語というものを体を通して考えてみて、頭の中だけでなく体全部をつかって感じたり考えたりしているということが分かった。(教師/保護者)
言語や文化が宿るのは頭の中か心が中心だと思っていましたが、四技能(耳、口、手、目)に関わる部位や、意外にも胃、足、服などにも表れているのだということに気がつきました。部位毎に考えてみると、意外なところで影響を受けている自分を発見できて、とてもおもしろかったです。(教師)
複言語・複文化を生きるとはどういうことか理解するために、自分を描き語ることの大切さを感じます。そして、多様な他者(参加者たち)のツールの表現と語りが、さらに自分やほかの人を理解する資源になることを改めて感じたワークショップでした。
次回は子どもたちが自分をどう表現し、語ったか、子どもたちの活動に焦点をあて、ご報告します。