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「マイアルバム」活動ー差異を資源に/往還のある活動 (202103セミナー17) 

継承日本語教育を考える

―バンコクにある親子でつくるテーマ型活動教室の実践から―


2021年3月28日に終了した第17回セミナーの2回目の報告です。セミナーではタイの「バイリンガルの教室子どものための教室」を、変化の歴史から現在の活動まで丸ごと紹介しました。

2回目の報告では、親で、教室での活動実践者でもある方々による2つの発表「教室の紹介」と「教室の特徴」、それらの発表に対するコメンテーターお二方からのコメントを掲載します。


前回までの記事

・終了報告はこちら

・報告①「特集の趣旨とコメンテーター紹介」はこちら


「教室の紹介」では、20年以上の歴史があるこの教室のこれまでの変化、現在の教室の目標と活動方針、教室に参加する子どもたちと親についての発表がありました。

「教室の特徴」では、この教室の大きな特徴である「テーマ型体験活動」の一つの「マイアルバム」活動の取り組みを紹介しました。この活動を行った中学年部は「テーマ型体験活動」を繰り返し実践しています。発表では、2019年度に13回にわたったその活動の様子や、それぞれの「アルバム」がたくさんの写真とともに報告され、その意義についても述べられました。


発表に使用したスライドをご覧になりたい場合は、各発表名の下にある「発表スライド」をクリックしてください。

 

【「バイリンガルの子どものための日本語教室」の概要と特徴】

  • 教室の紹介教室の変化と現在の活動 「バイリンガルの子どものための日本語教室の22年と今」 ケウホワサイ美穂子、衣畑美里 発表スライド


  • 教室の特徴 ―中学年部「マイアルバム」活動から 中学年部活動実践報告「マイアルバム」活動 衣畑美里、柳原麻衣、シリクルチャヤノント明希 発表スライド」

【「マイアルバム」活動へのコメント】

  • 池上先生コメント   ・差異を資源にした活動 ・往還のある活動 ―自分から友達、家族、社会、そして自分へ ・必然がある活動 ―なぜ読むのか、なぜ書くのか  ・多様性を可視化する活動


 

【「マイアルバム」活動へのコメント】


池上先生コメント

<差異を資源にした活動>

(中学年部「マイアルバム」活動の発表を受けて)ちょっと涙が出そうに…。すごく素敵な活動だったと思います。

1つ目の「教室紹介」のところから繋げてお話をするとしたら、「教室紹介」のところの全体のお話の中で、この教室の活動は年間を通してわずか20回とあったのですが、今回の中学年部のマイアルバムの活動を通して拝見すると、「わずか20回」という感じがしなくないですか、皆さん。単発で20回集まって活動をするということではなくて、非常にしっかりとした、大切なことを含み込んだカリキュラムとして構成されているということが分かったのではないかと思います。テーマ型で活動する時には、やはりこの点がとても大事になってくるということが、1点、思ったことです。

もう1つ、「教室紹介」のところで共有できたことに、「差異は資源である」ということがありましたよね。子どもたちのバックグラウンドや、保護者の皆さんのそれもそうですし、言語環境を含めて、全てのことの差異を資源にするというのは、ことばで言うとある意味たやすいかもしれませんが、では、どうやって?というところをこのマイアルバムの活動ではきちんと示せていたのではないかと思います。そこは非常に素晴らしい点の1つだと思いました。



<往還のある活動自分から友達、家族、社会、そして自分へ>

今度はマイアルバムの具体的な活動に移ります。マイアルバムというタイトルなのですが、ここに込められたものは決して「自分」だけではないですよね。この意味づけは最後のほうに皆さんから、特に柳原さんが保護者であり教えた立場であるということでまとめてくださった中に込められていたと思います。自分のことからはじめて、友達、家族、それから、自分たちがいる教室、学校、自分たちが住んでいる社会というものにどんどん中心を広げていく活動ではあるのですが、とても大事なことは、そこに往還ができているということです。自分から友達、家族に進んでいって、そこからまた自分に戻ってきている。その往還を作り出しているのがこのマイアルバム、みんなで作っていっている、自分だけの宝物になっている。それが今申し上げた往還をちゃんと作っているというところが非常に素晴らしいと思いました。

さらに10年後の活動、これは本当にいいなと思ったのは、今申し上げた繋げた上での「往還」を、今度は目の前ではない時間を超えたところに繋げていっている。その往還として戻ってくるのは少し先だと思うのですが、その先を子どもたちは見据えて成長していくのではないかと考えた点です。多分、この点は、教室が終わった後というか、その教室の先に、子どもたちが思い出したりお家の中で「こんなのを作ったね」と言って持ち出したりしたときに結実するようなものではないかなと思います。そういったことが分かるのは、やはり家庭で一緒にいらっしゃるお母さんたち、お父さんたちだなと思うので、教えていただけるととてもありがたいです。



<必然がある活動なぜ読むのか、なぜ書くのか>

もう1点、マイアルバムの活動、中学年部の体験型から言えることですが、私はこの活動、「読む」と「書く」という子どもたちにとってはある意味あまり好きではない、文字を媒介としたコミュニケーション活動が、無理なく効果的に配置されていると思いました。必然がありますよね。なぜこれを書くのか。そして、なぜこれが読みたいか。必然があると思うことが、やはりリテラシーを考える時に非常に大事になるので、「読む」「書く」という活動をこのように配置することによって、がんばって書こう、がんばって読もうというふうになっていったのではないかと思います。これはとても大事なことですよね。



<多様性を可視化する活動>

この2点は、発表を聞きながら活動を見ながら思ったことなのですが、最後のまとめを伺って、とても大事なことに思い当たりました。気づかせてくださったのは、こうやって多様性を可視化することで、自分の多様性も分かるのですが、それがおっしゃったように他者の多様性を尊重する姿勢を育むということ。それは本当に大事なことだなと思いましたので、これに気づかせてくださったことは、本当にありがとうございますと申し上げたいと思います。


最後になりますが、もしかしたら(教室活動に協力していた)あの先輩は私が知っている子ではないかと思います。バンコクに通って、教室を見学していた時に、高学年部にいた子だと思うので。(深澤:そうです。)びっくりしました。こんなにしっかりするんだと思って。(深澤:そうですね。小さかったですから)小さかったですしね。そういうことが、私なんか、本当にただの参加者、観察者であっても分かるというのが素晴らしいじゃないですか。直接関わっている方々は、もっともっとそういうことが実感できる場になっている。それを媒介しているマイアルバムという活動だったと思いました。



石井先生コメント

<本気になること>

ことばの力や、考える力を伸ばしていく上で大事なことは、やはり本気になるということだと思うんですね。

日本の学校にも、もちろんいろいろな優れた試みがありますが、形をきれいに整えるということは非常に優れているんだけれども、本当にその子が言いたいこと、伝えたい気持が伝わってこないことが多いように思います。子どもがワクワクして誰かに伝えたいと思う気持ちが弱いんだなというのを、今回の様々なアクティビティを拝見しながら思いました。

正しく書くということももちろん大事ですし、必要なことではあるけれど、子どもが自分の力を伸ばしていこうという時に大事なことは、子ども自身がこのことを伝えたい、ほかの人に知ってもらいたいと思うこと。みんな同じじゃなくて、違うから伝えたいと思う。コメントをもらえると「やったー!」とうれしくなって、もっと書きたい、今度は何を書こうかと、書きたい気持ちがふくらんでいく。書きたい気持の種を本当に見事に作っていらっしゃる。



<多様性お父さんが役割を持つこと>

活動を拝見して、お母さんだけでなく、お父さんたちが子どもたちの活動の場に率先して入ってきてくださっていることに気づきました。これはとても大きなプラスです。小学生でも中学年、高学年になると、男の子の体当たりを母親は受け止められなくなってきます。お母さんにはダーンと体当たりするなど、体を使って遊ぶことはできなくなってきますが、お父さんなら思い切り体をぶつけられます。体力面だけでなく、性差の意識も出てきますから、母親、父親、それぞれの特性を発揮して活動を充実させることができます

自分の子どもだけでなく、グループの中の子どもたちを多様な目で見ていることも重要です。お母さん、お父さんが活動に加わり、親たちの個性も反映された活動が展開する、厚みのある活動が展開していることにとても感動しました。

活動を見せていただいて、活動のあちこちで、参加者それぞれの個性が生かされているということを、感動しながら拝見しました。



セミナー報告の続きはこちら

報告③ 「各クラスの実践報告」

報告④ 「教室に参加する人々の思い(調査報告)・セミナー全体のまとめ」

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