第21回セミナー終了報告「実践の往還を考えるⅡー「わたし」につながる人生・教育・コミュニティでの実践ー」(20250316セミナー21)
- JMHERAT
- 3月16日
- 読了時間: 7分
更新日:16 時間前
JMHERAT 第21回セミナー
実践の往還を考えるⅡ
ー「わたし」につながる人生・教育・コミュニティでの実践ー
日時 :2025年3月16日(日) 10:30~16:30(タイ時間)
開催方法:タイ国シーナカリンウィロート大学とオンライン配信を組み合わせたハイブリッド型
当日参加者数:58名(対面30名、オンライン28名)
動画配信:2025年4月下旬以降公開予定
第21回セミナーは、初のハイブリッド開催となりました。対面・オンラインあわせて計8ヵ国、保護者とその子ども、教師、学生、研究者など、さまざまな立場の方々にご来場・ご参加いただき、盛況のうちに閉会しました。世界各地からの参加者が対面・オンラインともに「実践の往還」というテーマを通じて、一体となって活発な議論が行われました。
今回のセミナーは、昨年に引き続き「実践の往還を考える」をテーマに、三部構成で開催いたしました。第一部では「複言語・複文化ワークショップをめぐる実践と学び-教室実践とコミュニティ実践-」と題して、そのコミュニティを作る実践者、そのコミュニティの中で勤務校での複言語・複文化活動実践を育てた実践者、そしてそのコミュニティ参加者という3つの立場の方々からご発表いただきました。第二部では、「言語活動実践報告」として、複言語・複文化で生きる個人の人生実践や、教育現場での実践について発表いただきました。どの発表もとても魅力的な実践で、第三部「往還をめぐって」のグループディスカッションではそれらが契機となり、参加者各自が複言語・複文化を生きる個人として、今回報告された実践と自らの実践との「往還」について活発な議論が行われました。
今回のセミナーで得た学びや刺激をさらに多くの皆様と共有したいと思い、
アーカイブ動画の配信を決定しました。4月下旬以降公開予定です。
詳細は、後日改めてご案内します。

10:00 | 受付開始 |
10:30 | はじめに 参加者紹介/当研究会複言語・複文化ワークショップと言語能力観 「往還」について |
10:55〜12:25 | 第1部 複言語・複文化ワークショップをめぐる実践と学び -教室実践とコミュニティ実践- |
10:55 | 「実践共有会」とは? |
11:05 | コミュニティの学びはどう起こるのか 舘岡洋子(早稲田大学)「学びの二重の環 ―コミュニティの学びはどう起こるのか」 |
11:20 | 「実践共有会」参加者の教室実践 田川ひかり(大阪府立わかば高等学校) 「日本の公立高校での複言語・複文化活動を取り入れた授業実践」 |
11:50 | 「実践共有会」参加者のコミュニティ実践 三輪聖(テュービンゲン大学)、橋本洋二(豪州繋生語研究会、JMHERAT日本部会) 「「実践共有会」というコミュニティから得られる学び ―「二重の環」による協働省察の場づくりへの挑戦―」 |
12:25 | 休憩 |
13:15〜14:35 | 第2部 言語活動の実践報告 |
13:15 | 言語活動実践をどう捉えるのか |
13:20 | 複言語・複文化を生きる個人の人生実践 中村寿美(保護者) 「複数の異なる言語文化背景を持つ私と娘のライフストーリー」 |
13:50 | 教室における教師の教育実践 山田浩美(NIST International School) 「トランスランゲージングを取り入れたことで学習者はいかに変容したか ―タイのインター校IBクラスの文学授業実践から― 」 |
14:20 | コメンテーターから |
14:35 | 休憩 |
14:45〜16:20 | 第3部 「往還」をめぐって |
14:45 | 「往還」とは? ―ふりかえりから「往還」へ― |
15:00 | 参加者グループディスカッション |
15:30 | 全体質疑応答 |
15:50 | 報告された実践と「わたし」の実践を往還をめぐって |
16:10 | まとめ |
16:30 | 終了 |
16:30〜17:30 | 懇親会 |
参加者の感想の一部をご紹介します。
実践共有の場は、自分を語れる場であり、他者の話を聞ける場所でもある。また聞いた話をわたし事としてとらえ、自分の実践を見返し考える。そして実践をする。実践共有の場は、教育者、支援者、保護者にとっての大切な居場所になりうるということを今回のセミナーで学びました。ありがとうございました。(タイ・教師)
田川先生のダイレクトの生徒たち(日本国外から入学・転入した生徒たち)への取り組みに感動しました。言語学習などで置き去りになりがちな、心と言語の関係、実生活から感じる言語の壁や自己表現の内側を教育の現場で発信できる機会があるのは、家庭や社会では補えない大きな心のサポートの役割があると思います。(タイ・保護者)
私自身、いわゆる帰国子女であり、現在は日本の大学で複数言語環境で育った学生との日本語教育実践を行っています。私自身のことや、実践を省察する本当に良い時間になりました。 中村さんのご発表からは、私自身の子ども時代のことを思い出して思いがけず涙ぐみ(大人になっても、あの頃大変だった思いは消えていないんだなと発見です)、また「心がつながっていないと言葉は学べない」「私が心からやりたい、発信できるまで、(自分に)プレッシャーをかけないで待とう」「言語レベルに囚われなくていい」という数々の言葉に、私が今大学で向き合っている複数言語環境で育った学生を捉える視点、向き合う姿勢をあらためて考えました。 田川さん、山田さんの実践の共有にも、何をめざして、どのようにステップをつくり、生徒たちが自分で参加できる・貢献できる出番をつくっていくか、「語りたい・やりたい」場をどのように作っていくかという点で本当に多くの学びを得ました。 本日のセミナー参加を通して最も響いたのは、「私は生徒のことをどう見ているのか、私はなぜこれをしたいのか、私はなぜそう感じるのか」といった「自分をとことん見つめる」ことの重要性です。自分の実践について、なぜ私がそれをしたいのか、何をめざすのか、そのために、何をどのように行っていく必要があるのかをしっかり考えたいと思います。グループディスカッションでもこの点を皆さんと共有でき、さらにやる気になりました。(タイ・教師)
私の家族は、日本で生活する日本人家族(私、夫、子ども2人)です。現在、地方で暮らしていますが、この数年で一気に外国からの移住者が増え、外国とつながりのある方と共に生活することが日常になってきました。私たちのような日本で生活する日本人家族にとっても、複言語・複文化の考え方は切り離せないテーマだと感じています。今日のセミナーは、どのテーマも自分との共通点があり、私のフィールドだったら…と考える楽しい時間となりました。私自身が「子育ての実践者」、そして「教育の実践者」として、子どもたちや社会の様々な価値観と向き合っていきたいと思いました。今日の話題を、まずは身近なところで、家族と共有会をしてみようかな!(日本・保護者/教師)
私自身も直接けいしょう語教育の現場に携わっていないことから、常に「オブザーバー」の意識から抜け切れていなかったのですが、場面を変えれば私も「実践者」であり「往還のイメージ」に当てはまると気づけ、姿勢が変わりました。やはり中村寿美さんの「タイ語に繋がれない」ことに、ある意味傷ついていらっしゃるご様子は心に痛く、中村さんが経験されてきたようなことを、娘さんをはじめ、多くの子ども達が経験しているのだと再認識できました。「子どもだから(複雑な言語環境でも)何とかなるだろう、と思っていた」と娘さんのことをおっしゃっていましたが、子どもは語ることばを持たず、傷ついていたとしても看過されがちであること、「安心して、気持ちよく発信できる」場を大人が確保する必要があることを肝に銘じた次第です。(オーストラリア・教師)

「学びの二重の環」の発表から得た学びを契機に、セミナー参加者も発表実践を「私ごと」にし、自分の実践を振り返り、捉え直ししていたことがうかがえます。それはセミナーを運営した私たちも同様です。発表者の皆様、コメンテーターの先生方、ありがとうございました。6時間という長丁場ではありましたが、オンラインには世界各地の方々が、会場には複言語・複文化環境に生きる子どもとそのご家族、タイ国外から足を運んでくださった方々もいらっしゃり、「私」から始まり「私」に重なる省察の「往還」の環のサイクルを実感できたセミナーになりました。学びの環が重なり、学び合う場としてのセミナーのあり方を、今後もさらに改善して創っていきたいと思います。
各内容については、次回報告します。お楽しみに!