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第12回セミナー報告:私とことばと、生きるということーダブルの学生の声を聴くー(201609S12)

私とことばと、生きるということ

ーダブルの学生の声を聴くー 


日・タイ国際結婚の子どもである大学生たちの生の声を通して、 当事者のライフヒストリーに迫るセミナーを無事に終えることができました。 今回はタイの大学で日本語を専攻している、Tくん(大学3年生)とHさん(今春大学卒業)の話を中心に聞きました。


■Tくんの背景(父日本・母タイ)

タイで生まれ、タイの日系幼稚園に進み、小学1年から2年までの1年間を日本で過ごした以外はずっとタイで暮らす。バンコク近隣都市に住むが、3歳からバンコク市内にある日系幼稚園に通い、学校は日本人学校に進み中学までを過ごした。高校は日本の高校に進学したいと考えていたが受験に失敗し、タイのバイリンガル高校に通った。そこでタイ語に苦労することになり、大変な苦労をしたがなかなか助けてくれる人に出会わなかった。大学は日本語学科を選んだ。日本語はもちろんできたので、日本語学科に入って少し自信をとりもどしたが、ほかの科目はやはりタイ語で苦労した。現在大学3年生になり、タイ語もわかるようになってきて少し自分に自信がもてるようになった。


■Hさんの背景(父日本・母タイ)

小学校2年まで日本で育ち、父と別居することにした母親に連れられ妹とタイに来た。タイの居住地は日本人が全くいない北部の都市で、中高でも日本語学習の機会はなかった。小学3年に編入したがタイ語ができず1か月で1年に入れられ、以来同級生とは2歳年齢が上であることが負い目になっている。小学1年生の学習は簡単だった。そのせいかタイ語はあまり苦労した記憶がない。高校は、母の強い希望で理科系に進んだ。だが自分には向いておらず苦痛だった。大学では好きな勉強をしたいとバンコクの大学の日本語学科に進んだ。日本語を専攻した理由は、ことばに興味があることと、日本語ができることも強みだと思ったからである。現在大学4年生。

その質疑応答の様子をご紹介します。

 

Q.どうして日本語を勉強しようと思ったんですか?


T:絶対卒業できることが大切でした。ぎりぎりではなくて、しっかりと卒業したかったです。

H:高校で理系を選んで、それがつまらなかったんです。それで、ほかに何かできることがないかと考えたら、・・・日本語がある、と。言語を勉強したかった。仕事をするならちゃんと勉強したかった。生活を続けていくうちに、忘れていく。前はできていたのにできなくなっていくのが不安で。最終的には日本語を勉強したほうがいいかなって。普段はタイにいて、タイ語を話していて気づかないんですが、日本へ行って日本の親戚と話すとぱっとわからないことがあってタイ語でまず単語が出てくると、日本語で考える必要がないので、考えない。逆も同じ。ほかの人と話すと気づく。大学に入ってからタイ語と日本語の結びつきがスムーズにできるようになった。


Q.日本語学科に入ってよかったですか。


T:良かったです。友達と授業でわからないことを教えあえる。(高校までは思えなかった)「頑張ろう」という気になれました。


Tくんの課題は、タイ語の習得だったという。そこには学習言語能力の壁があったと考えられる。


真嶋先生:両言語の本を読んでいたか聞いたら、Tくんは読むのが好きじゃなかったと言っていましたね。だからタイ語には苦手意識がある。Hさんは日本のお父さんに送ってもらった漫画を読んでいたと。学習言語能力の修得には5~7年かかると言われます。今は、友達と助け合うことができているから、成長していっているんでしょうね。

参加者の感想

  • 日本語が出来るのにどうして日本語学科に入学したのだろうと不思議に思っていたが、様々な背景、状況、気持ちがあってのことだということが理解できて、日本語学科の教員として勉強になった。(教育関係者)

  • 子どもの立場、考えを知ることができ良かった。親としての考え思い、子どもの考え思いは、決して同じではないというのを前提に子どもに向き合えそうです。また親との個の関係性、環境によっても言語や文化に対する考え方が変わってくるのだと知ることができました。(保護者)

  • こんなにじっくりとダブルの方のライフヒストリーを聞いたのは初めてでした。3名の方それぞれが辛い時期を経験し心が折れそうになりながら、最終的には自分の力で乗り越え、ダブルであることの豊かさを感じられることが伝わってきました。自分のいる環境にもこのような方はいると思います。これまでとはまた違った新たな視点を得ました。ありがとうございました。Tさんは中学時代、私の息子と同じだったと思います。感動しました。(教育関係者)

  • 当事者である方々のお話、大変勉強になりました。ありがとうございました。多言語であるという言語的な環境を「恵まれている/有利である」と子どもが(将来的にでも)捉えられるような環境を作ることが周囲の大人の大きな役割であると感じました。(教育関係者)

  • 日本にいたときには、ダブルや日本に来ている外国ルーツの子どもの支援をしたことがありますが、タイについては全くわからないので、今回のお話はとても勉強になりました。サポートは特に必要ないといっていましたが、学校でできるサポートも考えていきたいと感じました。(教育関係者)

 

保護者や教育関係者などの参加者からも多くの質問が飛び交い、 会場が一体となった大変活気ある時間を過ごせたのではないかと思います。 参加してくださったみなさま、ありがとうございました。

真嶋先生、学生への激励のコメントありがとうございました。 今回は残念ながらご参加いただけなかった方も、次回ご参加いただけると幸いです。




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