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タイで子どもを育てる家族の言語政策―子どもの学校選択に関するアンケート調査から―(202204セミナー18)

JMHERAT 第18回セミナー

親と子の言語政策 ファミリー・ランゲージ・ポリシー


2022年4月2日(土)に開催した第18回セミナーの2回目の報告です。今回は三つの発表のうち、一つ目の発表について掲載します。


前回までの記事

・終了報告はこちら

・報告①「Family Language Policyとは」はこちら

一つ目の発表「タイで子どもを育てる家族の言語政策―子どもの学校選択に関するアンケート調査から―」は、2022年2月に実施した、タイで子どもの学校選択をした経験の持つ親を対象にした調査の結果をもとにした発表です。この調査では、タイ日国際家族84、日本人家族95、その他の家族10から回答が得られ、幼稚園・小学校・中学校・高校の学校選択要因を、FLP形成の影響要因がまとめられた「FLPダイナミックモデル」(Curdit Christiansen and Huang, 2020)を使用して分析しました。発表では、タイ日国際家族と日本人家族の特徴に焦点を当てて報告しました。


発表スライドは以下の「発表スライド」をクリックすると、ご覧いただけます。

 

アンケート調査報告

「タイで子どもを育てる家族の言語政策―子どもの学校選択に関するアンケート調査から―」

 調査チーム:

  松岡里奈(大阪大学日本語日本文化教育センター、保護者、JMHERAT)

  久保亜樹(国際交流基金ベトナム日本文化交流センター、JMHERAT)

  村木佳子(シラパコーン大学、JMHERAT)

  常見千絵(泰日工業大学、JMHERAT)

 

これまで保護者や子どもたちへのインタビューや複言語・複文化ワークショップ等を通じて、様々な学校の選択肢があるタイでの日本につながる家族の学校選択の事情について理解してきました。例えば、日本人学校は首都と東部にしかなく、インターナショナルスクールの学費は高額なため、住む地域や親の経済力次第で選択できる学校が決まってくること、また、日本人学校からタイ語で学ぶ現地校への進学のように学習言語を変えるケースがあることなどの事情があります。しかし、今回のような大規模な調査を通して初めて量的に結果が表れたことで、タイの日本につながる家族の実態がより明らかになったと思います。


また、今回は国際結婚家族に加えて、多くの日本人家族の保護者の方々にご回答いただきました。これまで国際結婚家族の子ども・保護者にインタビューをすることが多く、国際結婚家族では家庭内や学校で日本語・タイ語・英語を使用していたり、日本とタイを行き来していたりする場合が多かったことから、言語・空間ともに「移動する家族」といえば、国際結婚家族の子どもだという印象がありました。しかし、今回タイで子どもを育てる家族を対象とした調査をしたことによって、タイで子育てをしている日本人家族が、日本とタイ、およびその他の国・地域の間の移動を前提とした生き方をする家族、つまり「移動する家族」として、国際結婚家族以上に当事者性が高いことに気づかされました。これまでも、「移動する家族」の調査としては日本人家族も対象としてはいましたが、もっと積極的に調査していく必要があるでしょう。


この調査の対象は日本語での回答が可能な保護者の方に限られており、国際結婚家庭のタイ人等の保護者の回答はわずかしかありませんでした。共に学校選択に関わる配偶者や家族の意見を記述している回答も多くありましたが、本人の回答ではないため、この調査によって明らかになったのは学校選択事情の一面に過ぎないとも言えます。また、その家族のFLPをより深く知るためには、アンケート調査だけではなく、インタビュー調査等で質的に調査を行う必要があります。しかし、現在、タイで子どもを育てる日本につながる家族にとって、今回の調査結果は、今後の子どもの学校選択を考えるうえで有益な情報になったと言えるのではないかと思います。


本発表では学校選択の要因を中心にご報告しましたが、現在タイで学校選択をしている/する予定のあるご家族がより必要とされる情報を提供しようと、「学校選択調査報告会」を開催しました(当日の資料および終了報告記事はこちら)。今後も、タイの複数言語環境で育つ子どもたちの言語発達や成長につながる活動を続けていきたいと思います。


セミナー報告の続きはこちら



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