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親子でつくる「BKKバイリンガル教室」特集―実践の変化の歴史から現在の活動まで(202103セミナー17)

継承日本語教育を考える

―バンコクにある親子でつくるテーマ型活動教室の実践から―



2021年3月28日に開催した第17回セミナーの内容をこれから数回に分けてご報告します。

前回は参加者の感想を一部取り上げて終了報告をしましたが、今回は「セミナー特集の趣旨」と「コメンテーター紹介」を掲載します。


 

セミナー特集の趣旨


 2019年6月に日本語教育推進法が施行され、日本国外の子ども達も公的日本語教育の対象として関心が高まり、各地の継承語教育が取り上げられています。しかし、継承語教室は親が運営する小規模なものが多いため、その運営も実践もなかなか知られてはいません。そこで今回のセミナーではタイの「バイリンガルの子どものための日本語教室」の実践を、変化の歴史から現在の活動まで丸ごと紹介することにしました。

 今回実践を報告する教室は20年の歴史がありますが、2008年に教室の意味を問い直し「子どもたちが主体的にアイデンティティを構築できることばの力の育成」を目標に掲げ、親や子、自分たちの多様さを資源として生かす教室づくりを目指すことにしました。そこから教室は大きく変化してきました。

 継承語教室は教師がいない事が一つの大きな問題と言われていますが、この教室は教師を雇っていません。理念を共有し、親が全員で、テーマを軸に展開する体験型活動を実践しています。世界のどのような地域でも親と子がいれば実施できる継承語教育の可能性を探ることは、とても重要なことだと考えます。

 また、継承語教育では親にとってと子どもにとっての日本語の価値のずれが常に問題になっています。今は価値が見出せなくても、努力が実れば将来子どもは感謝するから頑張らせよう、というのが継承語教育を支える多くの親の思いのようです。将来のために親子で頑張り頑張らせるのが継承語教育の姿なのでしょうか

 この教室の実践を通し、継承語教育は、誰のために、何を目指し、何をすることなのか、みなさんと一緒に考えたいと思います。そしてこの教室の変化の過程と現在の実践の形が、今世界のあちこちで、新たに継承語教室を作りたいと考えている方々や教室のありかたを問い直したい方々にとって一つのモデルとなることを願っています。



コメンテーター紹介


池上:早稲田大学の池上です。今日は皆さんと一緒にこの教室の実践について拝見すること、考えることをとても楽しみにここにいますが、講師というかコメントをする立場ということを忘れないようにしたいと思います。私が初めてバンコクのこの教室に関わったのが2007年の3月になります。お母さん方と深澤さんと一緒にお話をしたというところから関わりが始まっています。2008年から見学を始めて今日に至るまで、いろいろなことを考えてきましたし、その変化、変容、成長も私なりに捉えてきたつもりですので、そういったことも絡めながら皆さんと一緒に実践について語り合うことができたらとても嬉しいなと思っています。よろしくお願いいたします。



石井:私は池上先生よりも少し遅れてタイにデビューしました。タイのみなさんの様々な活動をタイに来るたび見せていただきながら、私自身が本当にいろいろなことを考えさせていただいています。

私自身※1も国際結婚で、圧倒的に日本語環境ですが、1言語だけではない子どもたちと生活してきた中で、子どもは子どもなりに自分のバックグラウンドにあることばや文化、あるいはそれぞれの場でかかわる人々を、私にはない視点で見ているんだなということに気づきます。毎回、バンコクの複数の言語文化の子どもたちの活動を見せていただいて、こういうふうに関わっていくことができるんだとか、こんな可能性がありそうだ、これは難しいんだな、などと、改めて自分を振り返りながら考える機会をいただいてきました。私自身にとってバンコクに来ることは自分を振り返り、整理する機会をいただくことであり、多文化の親子がここでコミュニティを作って、たくましく活動を展開し、そして発信を続けていることに、すごく励まされます。

今日も皆さんの実践をみせていただいて、やっぱりそうだ、それでいいんだと確認を得たり、同じような悩みを知って共感を得るなど、自分に重ねて考えられることがたくさん出てくると思いますので、それを楽しみにしております。よろしくお願いいたします。


※1 ご自身も国際結婚されています




セミナー報告の続きはこちら

 報告② 「バイリンガルの子どものための日本語教室」の概要と特徴

 報告③ 「各クラスの実践報告」

 報告④ 「教室に参加する人々の思い(調査報告)・セミナー全体のまとめ」

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